結晶誘発性関節炎について
結晶とは
小学生のとき、食塩水を使った実験をしませんでしたか?
食塩を水に溶かしていくと、ある程度以上の濃度になると溶けきれなくなり、水の中に食塩が結晶として姿を現します。(析出:せきしゅつといいます)。
尿酸やピロリン酸カルシウムなどの結晶が原因となって関節に炎症を起こすのが結晶誘発性関節炎です。
痛風と偽痛風
痛風は尿酸という物質が原因となっておこります。
血液中に溶けきれなくなった尿酸が結晶の形で析出し、関節の中に沈着します。
沈着した結晶が剥がれ落ち、関節内に散らばると白血球が集まってきてこれを排除しようとします。
(詳しくはこちら痛風についてをご覧ください)
一方尿酸以外の結晶が原因となっておこるのが偽痛風です。
偽痛風の原因として有名なものはピロリン酸カルシウムですが、その他にも尿酸ナトリウム、ピロリン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト(塩基性リン酸カルシウム)、シュウ酸カルシウム、コレステロールなどがあります。
これらの結晶がなぜ析出沈着するのかはまだはっきりとわかっていません。
ピロリン酸カルシウムは加齢性の関節変化が原因となると考えられており、高齢の方に多いのが特徴です。
シュウ酸カルシウムは透析患者さんに多く見られます。
コレステロール結晶は関節リウマチや慢性の関節症などで起こることが多いです。
症状の特徴
痛風の場合は運動で関節に負担をかけたあとや、暴飲暴食がきっかけとなって起こることがあります。
偽痛風の場合は特に誘因なく、ある日突然関節が腫れて熱を持ったり、激痛を生じたりします。
発熱は関節だけにとどまらず、体温が38度近くまで上昇することがあります。
いずれも関節内に析出、沈着した結晶が剥がれ落ち、関節内に散らばることでおこる炎症の症状です。
検査方法
カルシウム成分はレントゲンにうつるため、レントゲンで関節内に白いかたまりが見えると偽痛風の可能性が高くなります。
血液検査で尿酸の値が高ければ痛風の可能性が高くなります。
関節液検査
関節の滑膜という部分が炎症を起こすと関節に水が溜まります。
詳しくはこちら膝の構造(骨、関節、軟骨、靭帯など)についてをご覧ください
通常関節液は黄色透明ですが、結晶性関節炎では結晶や白血球の成分のため関節液が白く濁ります。
関節に針をさして関節液を抜き、それを顕微鏡で観察すると結晶を見ることができます。
尿酸結晶とピロリン酸カルシウム結晶の見分けには偏光顕微鏡という装置を使います。
尿酸結晶は針状の結晶、ピロリン酸カルシウムは長方形、平行四辺形の結晶です。
偏光顕微鏡でみると、尿酸結晶は結晶の長軸に対して平行にすると結晶が黄色に、垂直にすると結晶が青色に見えます。
それに対し、ピロリン酸カルシウム結晶は結晶の長軸に対して平行にすると青色、垂直にすると黄色に見えます。
この見え方の違いを利用して2つの結晶の鑑別ができます。
治療方法
痛風、偽痛風、いずれも治療としては炎症を抑え、痛みをとることが目的となります。
消炎鎮痛薬の内服や外用剤を使用して積極的に痛みを抑えていくことが大切です。
関節炎の症状が強い場合には関節液を抜いた後にステロイドという薬剤を注入します。
ステロイドは関節の炎症を速やかに鎮める作用がありますが、関節軟骨を痛めてしまうような副作用もあるため頻回に使用することは避けた方がよいです。
またステロイドを使用すると血糖値が上がることがありますので、糖尿病の方には基本的に使用できません。
どうしても使用しなければならない場合は糖尿病主治医と相談して行います。
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